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3月, 2025の投稿を表示しています

JILL PLATNER

  年齢を重ねてくると、アクセサリーをつける意味も段々と変わってきました。それは誰かにみてもらうような、自分を飾るような感覚とは真逆、もっと内省的な感覚で、何かの印やお守りのようなものに近いのかもしれません。私たちがつけているJILL PLATNER(ジル・プラットナー)のジュエリーもそのひとつです。自然界の形態やテクスチャーを源に生み出される有機的なフォルムは、とてもオーガニックなインスピレーションから生まれたもの。ただ、それが単なる自然回帰に帰結しない、極めて洗練された造形となっているのは、制作の場を東海岸とし、ジュエリーだけでなく大型の金属彫刻作品も手掛けている彼女のコンテンポラリーなセンスではないでしょうか。 そして、私たちはそれが20世紀の彫刻家たちとも通ずるものがあるようにも感じています。例えば、イサム・ノグチが石や金属で追求した、動的な静寂。また、自身の作品を「抽象ではなく 本質を表現した具象」と語ったコンスタンティン・ブランクーシなどもそれに当てはまるように感じています。もちろん、今健在なのはジル・プラットナーだけですが(笑)。彼女の作品を手にとられる際は、ぜひその作品名も私たちに訊ねてみてください。"Birdbone" "Seaform" "Gloriosa" "Armadillo"など、妙に腑に落ちる歪みや曲線が新たにみえてくるかもしれません。 また、実際のジュエリーの一部分についても触れておきたいと思います。よく訊かれるのが、ブレスレットやネックレスに用いられている紐について。これはTENARAという特殊繊維を編み込んだもの。水を吸収せず、太陽光に長時間晒されても、色褪せどころか強度も劣化しないという、非常に耐候性の高いものです。これは、自身がサーファーであるライフスタイルを起点とした選択と思うのですが、やはり何年も着けている私たちのブレスレットも、TENARAに劣化の面影はなく、普段の生活の中でもこの強度に信頼をおいています。金属部分を丁寧に手入れするもよし、経年変化に任せるもよし、つける人の自由が良いと思います。 誰もが知るハイブランドでもなく、かつてのシーンを席巻したネイティヴのそれでもなく、現代の私たちが、これから歳月を重ねながら身につけていきたいものは何な...

Maddalena Selvini

  ミラノを拠点に活動するMaddalena Selvini (マッダレーナ・セルヴィーニ)。石や羊毛、木、紙といった古来からの素材文化の調査と、オルタナティヴな生産方法に焦点を当てたデザイナーです。ちょうど最近、彼女がユニークに梱包してくれた荷物が届き、中から出てきた品をお店に並べている状態です。 まず、紙と紙からなる容れ物。厚さの異なる平面の紙同士を折り、組み合わせていくと、それぞれの紙の張力が重なって自立性が生まれます。買ってくださったお客さま方にも、なるべくご自身で組み立ててみてほしいということ伝えながらお渡ししています。そうすることで、このプロダクトがいかに面白い発想でつくられたかということが伝わると思うからです。 そして、もうひとつは、まるでワンタンのようなフェルトのピロー・クッション。彼女は、フェルトは綿や他の織物よりも粘土に近いと表現しています。熱に触れた羊毛繊維は収縮し、どんな形にもなる。そして、織物のように柔らかくて薄いものにも、土のように硬くて厚くてコンパクトなものにもなると言っています。座布団や枕、クッションといったそれらの休める要素を折衷したような、穏やかな弾力が魅力的です。いつも硬くて座りにくかった場所もすっかり居心地良くなるわけですから、物を通した居場所の創造でもありますね。 次は、石とそれに乗った不思議な立体から成るディフューザー。石の中にはキャンドルを、上に乗せた立体にオイルを垂らすことで、香りを立ち上らせる仕組みです。この不思議な立体は、石を回転させる際に発生する粉塵を型に入れ、高温で固化させたもの。その出来上がる立体の多孔性に着目しなければ、きっとディフューザーにはならなかった。私たちはこれにAPFRのフレグランスオイルを組み合わせ、毎日香りをたのしんでいます。曲線の柔らかさもあるからか、なんだか生き物のような、新しい家族のような愛らしさを感じています。 また、私たちがインテリア類をディレクションしているリラクゼーションスペース THERAPY-Cにもベニヤのバスケットを配置しました。こちらはレーザーカットされたフレキシブル・ベニヤの平面パネルを曲げながら組み合わせていくもので、ベニヤの反発力が小さな空間を形成し、その模様が湾曲していく様子がとても美しいです。品名の"チェスト"はギリシャ語で"箱・編...

ゼルダの伝説

  子どもの頃、ゲームを通してとても良い体験ができたなと思うものがいくつかあります。そのひとつが“ゼルダの伝説”。今度は自分の子どもがゲームを理解したり興味を持ち始めたタイミングだったので、SWITCHでリリースされている令和のゼルダを買い、家族全員で相談しながら進めているところです。 ご存知の方も多いと思うのですが、このゲームはただ敵と闘って強くなるだけでは進めません。知恵を使い続けなければ前に進めないようになっています。例えば、崖の上に行きたいけれど、そこに階段がない。そしたら足場となる箱や木、トランポリンを組み合わせて使うなど、実際の社会と同じように工夫が必要なわけです。火と水の関係、物の方物曲線や空気抵抗といった法則が存在するため、それらの反応や組み合わせを駆使しないと進んでいけません。 今回、何十年振りにこの新しいゼルダに興味がわいたのには他にも理由があって、主役が男の子ではなく女の子(ゼルダ姫)というところ。そして、なんといってもグラフィックの美しさ。登場人物たちのポップなかわいらしさに加え、フィールドの色彩もまるで異世界を旅するような独特な情緒を感じさせます。 謎解きはもうすっかり親より子どもの方がお手のものです。どんどん知恵や試行を繰り出していきます。いつか大きくなったときにも、家族みんなで相談しながらゲームをクリアしたことと、遊びと勉強を分けたり隔てる必要のないことを、どこかに感覚として憶えていてくれたら嬉しいなと思います。

TUKI heavyweight cotton terry

  TUKIのスウェットパンツ。今期はロンジョンに加えて、新たにショートのコットンボクサーも加わりました。まだ金沢は寒いので、ロンジョンの上にコットンボクサーを重ねて穿き、長短のセットアップで過ごしています。もう少し季節が進み、暖かくなったらショート単体で穿こうかなと、楽しみを二段階に試みているところです。 ヘヴィな編み立てやフラットシーマといった細部の美しさ、緻密に調整された完成度の高さは一目瞭然なのですが、ここ数シーズン続く、いつもより弾力感のある素材使いの連鎖に、とても新しい表現を感じています。 そういえば、今期から片側にだけポケットが付きました。デザイナーの原田さんに「今回はポケットがついたのですか」と訊いてみたところ「はい、片側にだけ、違和感があって良いかなと思って」という気持ちの良い答えが返ってきました。ファッション関係の人たちが、パリだパリだと騒いでいる時期にも、静かに町内の草刈りをしている原田さんがとても好きです。