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阿川佐和子さん

  先日、友だちがお酒の席で興味深い話しをし始めました。阿川佐和子さんについてです。 阿川さんは9年半もの間、お母さんの介護を経験されていて、途中からお父さんの介護も加わり、そこにご自身の更年期も重なっていたという、とても大変な経験をされているわけですが、自分たちにとって何が興味深かったかというと、彼女が「サボっていた」と公言している部分にあります。彼女は、介護をしながらゴルフに行って、お母さんに「あなた疲れた顔してるわね。仕事が大変だったのね。」と言われていたけど、実はゴルフに行っていただけという、その後ろめたさをつくることで、少し相手に優しくなれたそうです。 また、ある時は、お父さんに一生懸命に持っていった食事を「不味い」と言われ、腹が立ったから、こっそりお父さんのお金で自分のブラジャーを3本買ってやりました(笑)とも話されたりしてて、なんて気持ち良いエピソードだろうと思ったわけです。 私たちの周りにある、"こうあるべき"や”正しくあらねばならない”って、もちろん周りから決められているような部分もあれば、実は自分たちの心の中で勝手に作り上げてしまっている部分も大いにあるわけで。しかも、その環境は境遇は変えにくいけれど、自身の考え方はまだ調整がしやすい。 しなやかに不真面目に。「堅すぎる木は折れる」と説いたのは老子だったでしょうか。 この夏も実家の仏壇にAPFRのお香を立て、日頃の愚行を先祖に窘めてもらおうと目論んでいるところです。

Nukeme Exhibition "Lease Your Body"

Malcolm Mclaren(マルコム・マクラーレン)による1983年の曲、 D'ya Like Scratchin' (Special Version)。初めて聴いたときももちろん新鮮で面白かったのですが、いつまでの新しい発見があって面白くて。オールドスクールなビートの上で展開されるそれは猥雑なのに上品。"ScScScSc、Scratchin'Scratchin'..."というフレーズ、異常にエレガントな上物のメロディー、やっぱり自分にとってはいつ聴いてもシニカルで美術性の高い音楽なのです。この"ScScScSc、Scratchin'Scratchin'..."というフレーズを聴いていると、それがこの2020年代に進行形の表現を行うアーティスト Nukeme(ヌケメ)氏の頭の中、ひいては彼のミシンの音、さっきのフレーズ、Scratchin'Scratcn'...が、すっかりGlitchin'Glitchin'...と変換されていくように、いつの間にかレコード針のその先からミシンの針先へワープしている感覚に陥ってきてしまいました。 彼の表現は、コンピュータミシンの刺繍データを意図的に改変し、刺繍の針の動きに破損やエラーのような状態を発生させることで、新たな表現を生み出す刺繍手法、グリッチ刺繍。キャンバス作品も存在するのですが、衣服を支持体とした作品も制作していて、今回はそちらを展示し、オーダーの相談を受け付けているところです。 "Pornhub"と“Pfizer”をグリッチして、そのタイトルが“Mr.Lonely”、"Calvin Klein"と“デパス錠”で“Dazed and Confused”ですから、これはもう社会的皮肉がたっぷりなわけですが、ロジックそのものや時代に対してのスタンス、その特異性はもちろん前提のものとして、最終的なグリッチ刺繍の完成度の高さにも感嘆せざるを得ません。昨今、とりあえず大ネタの風呂敷だけを広げたようなシニカル風(あくまで風)なものはたくさん存在すると思うのですが、そのほとんどに緊張感がなく、私たちにはとてもつまらなかった。彼はもっと暗闇から社会に眼を開いていて、それら事象...